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ネコの慢性腎不全について

2012.06.28

今回は、高齢の猫で多い慢性腎不全についてお話します。うちの猫が高齢になって、最近体重が減ってきた、食欲が落ちてきた、前よりシートにつくおしっこが薄くなり量が多くなった、などがみられる場合は腎不全の徴候かもしれません。腎不全では不可逆性の(もとの状態に戻らない)機能不全がおこるため、早期発見・早期治療が必要となります。では、詳しく病気についてみていきましょう。

 腎臓には予備能力があり、全体の60%が失われるまで症状は現れず、血液検査でも全体の75%まで失われないと腎数値の悪化は認められません。ですから血液検査で異常が認められたときにはすでにかなり進行した状態といえます。
腎臓の働き
腎臓はおおきく以下の3つの機能があり、腎不全になると右のような症状が出てきます。
・尿産生  ⇒尿が濃縮できず、大量に薄いおしっこが出る。
・造血因子(エリスロポエチン)の産生  ⇒非再生性貧血の徴候がみられる。
・血圧の調節  ⇒血圧がコントロールできず、高血圧になる。
発症年齢
診断時の平均年齢は約9歳で、罹病率は加齢とともに増加します。
原因
ほとんどの症例は特発性(原因不明)です。ただし、シャム猫、メインクーン、アビシニアン、またバーミーズとロシアンブルーは、他の猫の2倍以上の確率で、腎不全となることがあります。
症状
・ 元気・食欲の低下あるいは消失
・ 嘔吐
・ 体重減少
・ 多飲・多尿・脱水
・ 被毛の劣化
・ 口内炎・口臭
検査所見
血液検査
RBC・PCV・Hb:↓ 貧血の程度(非再生性貧血)
BUN・Cre・IP:↑  腎臓の障害の程度(高窒素血症)
Ca・ K:↑または↓ 電解質(ミネラル)の異常
尿検査
腎臓は糸球体で血液の濾過を行い比重1.008~1.012の尿(原尿)を作り、続く尿細管で濾過した原尿から必要な成分のみ再吸収を行い濃縮して(正常では比重1.035以上の尿として)排泄します。腎不全の悪化に伴い濃縮することができなくなってくると尿の比重はだんだんと原尿に近づいていきます。また、糸球体に異常があるとタンパク尿が出現します。
・エコー検査、レントゲン検査

 

   正常な腎臓                                小さく萎縮した腎臓
血圧検査:高血圧が認められます。
治療
・ 輸液療法
腎不全では水分維持が難しくなり、脱水や電解質異常が進行します。そこで、症状にあわせ、入院または皮下点滴による点滴治療を行います。また、症状が安定すれば、獣医師指導のもと自宅点滴も可能です。
・ 
エリスロポエチン療法
腎不全では造血因子であるエリスロポエチンが産生できなくなり、貧血をおこします。そこで、病院にて造血因子を皮下注射で投与することにより、貧血を改善させます。
・ 
食事療法
腎不全ではたんぱく質やリンの処理が難しくなります。そこで、食事中のたんぱく質、リン含量を制限したフードを与えることで腎臓の負担が減り、寿命が延びるというデータもあります。(表)また、新鮮な水をできるだけ多く飲ませる機会を与えたり、ストレスのかからない環境作りなども重要になります。
薬物療法
 経口吸着剤:腎不全では体の老廃物の処理が難しくなります。そこで、内服で吸着炭を服用することにより、腎臓の働きを補助することができます。
血管拡張剤:腎不全では血圧の調節が難しく高血圧になり、さらに腎臓に負担をかけます。そこで、血圧を下げる血管拡張剤を使うことによって、腎臓保護につながります。
制酸剤:老廃物の蓄積や胃酸を刺激する物質の上昇により、胃炎や胃潰瘍が生じることがあります。この場合にはガスターなどのH2ブロッカーが必要となります。
その他必要に応じて、水溶性ビタミン、カルシウム剤やビタミンD製剤、制吐剤、 食欲増進剤などの投与が必要となる場合もあります。


腎臓はネフロンと呼ばれる腎単位で形成されており、一度失われたネフロンは再生されることがありません。猫の腎不全は心不全と同様に治る病気ではありません。しかし多くの猫はしっかりとした管理をしていけば、長期にわたって生存していくことも可能です。そのためには早期発見、早期治療が重要となります。この病気は治すのではなく、症状の進行を遅らせ、いかに良い状態を持続させるかが問題である、ということです。なるべく早く症状を見つけてあげて、食事療法、体重管理などで腎臓の悪化を防げるように、高齢になってきた猫ちゃんの飲水量・尿量・尿色などを常日頃から気を付けて見ていてあげてください。

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